DoCK 映像リサーチセンター

レポート① DoCKキックオフ――「シンポジウム <共創>的な知の開発拠点に向けて」の概観

分野横断会議・シンポジウム
2026.10.19

はじめに:DoCKとは何か

2026年3月、東京藝術大学大学院映像研究科に、新たな研究拠点として「映像リサーチセンターDoCK(Development of Co-Creative Knowledge/<共創知>の開発)」が設立された。DoCKは、国際的に通用する卓越した映像表現を創り出すクリエイターやプロデューサーの養成を核に、リサーチャーやエデュケーターの育成まで視野に入れた、総合的な人材育成を担う実践研究拠点であり、「文化芸術活動基盤強化基金(通称:クリエイター支援基金)」の助成を受け、実践的な育成プログラム・カリキュラムの構築に取り組んでいる。同基金は、文化庁の補助金により独立行政法人日本芸術文化振興会に設置されており、学生や社会人を対象としたグローバルに活躍できる人材を育成する「クリエイター等支援事業(育成プログラム構築・実践)」等を展開している。

その開設を記念し、2026年7月12日、国立映画アーカイブ 小ホールにてキックオフシンポジウムが開催された。3時間半にわたるシンポジウムでは、基調講演・クロストークにおいて映像分野の第一線で活躍する専門家が集った。議論の過程では、映像分野における人材育成のそのものの可能性や困難さ、映像作家・アーティストとしてのあり方、プロデューサーのあり方、そしてAIの問題について等、多岐にわたる議論が行われた。本レポートでは、そのシンポジウムの様子の一部を、以下4記事に分けてお届けする。

<共創>を思考するシンポジウム:事業紹介〜基調講演〜2本のクロストークまで

まずは、シンポジウムの概略を示しておく。「キックオフ・シンポジウム <共創>的な知の開発拠点に向けて」は、前半に事業全体の紹介とリピット水田堯氏による基調講演、後半はゲストを招いたクロストーク2本で構成された。

まず、DoCKセンター長の岡本美津子教授(東京藝術大学映像研究科)の挨拶と、東京藝術大学 日比野克彦学長のビデオメッセージが上映され、イベントが開始された。

続いて、DoCKの事業・活動紹介(後述)ののち、リピット水田堯氏(南カリフォルニア大学 映画・メディア研究・比較文学・東アジア言語文化教授)による基調講演に移った。基調講演は「映像の未来を創る人を創る—国際的な視座からの提言」というタイトルで行われたが、リピット水田氏は、「『創る人を創る』というのは、一体どういう意味を持つのか、まずはそこから触れていきたい」と、創作者(creator)や創作(create)の起源に遡り、映画の起源に触れていった。創作そして映画の起こりから、教育の在り方についてダイナミックに問いを結ぶ。

休憩を挟んで、クリエイター・クロストークが行われた。DoCKの使命の一つである<共創知>について、<越境>というキーワードをもとに、第一線で活動する作家たちの実経験のヒアリングから始まる。映像制作の現場における様々なボーダー、共創と協働の違いについても議論が及んだ。

最後に、プロデューサー・クロストーク。「変化する制作環境と求められる人材」という副題に基づき、「IP の分野横断的展開」「グローバル戦略」「AIによる制作環境と求められる人材の変化」といったキーワードを起点に議論が展開された。

詳細な内容については、各記事をお読みいただきたい。

会場のようす。国立映画アーカイブの小ホールが満席となった。
会場のようす。国立映画アーカイブの小ホールが満席となった。

DoCKの事業内容:既存の枠組みを越境する10のプログラム

各議論についてはそれぞれの記事で触れることとし、ここではDoCKのプログラムについて簡単に触れておく。

多彩な事業・活動紹介については、映像研究科の布山タルト教授、横山昌吾教授より説明が行われた。DoCK のコンセプトとミッションは、先に述べた通り「Development of Co-Creative Knowledge/<共創知>の開発」である。具体的には、10のプログラムで構成され、プログラムは、アニメーション[3プログラム]・映画[3プログラム]・分野横断[4プログラム]の3本柱からなる。

それぞれの柱について、アニメーションプログラムは「文化や習慣の違いを乗り越え、国際的に通用する表現や制作上の課題解決を学び、さらに将来へ向けての国際的なクリエイターの人的ネットワークを構築することを目指し」ていると、布山教授は説明する。また、映画プログラム担当の横山教授は、「映画分野では、国際的な映画教育、文化機関や映画産業界、プロフェッショナルとの方々との共創をテーマとして実践していきます」と語った。

布山タルト(東京藝術大学大学院映像研究科 アニメーション専攻 教授)

詳細はDoCK WEBサイトをご覧いただきたいが、特徴として、東京芸術大学生向けの講座のみならず、社会人等も受講可能な公開講座(アニメータースキルアップ講座、プロデューサー育成講座、エデュケーター育成講座等)、海外の映像教育機関との連携プログラム(国際映画企画開発・脚本ワークショップ等)、企業との積極連携をはかるプログラム(先端技術クリエイティブワークショップ等)など、幅広くかつ領域横断的に展開される。加えて、教材やツールの研究開発を行うプログラムも並走する。

横山昌吾(東京藝術大学大学院映像研究科 アニメーション専攻 教授)

DoCKのプログラムは、コンテンツ制作を取り巻く環境が大きく変化する時代のなかで、創作者・プロデューサーそれぞれが国際的視座に立って学ぶとともに、映像を取り巻くさまざまな事象に分野横断的に、多様な連携をともなって取り組むよう構成されている。いずれも「アニメーションや映画等の深い専門性を土台に、既存の枠組みや産学官の垣根にとらわれない」という基本姿勢を体現したプログラム展開だ。興味がある方は、ぜひ各プログラムの詳細をご覧いただきたい。

次項では、リピット水田堯氏による基調講演「映像の未来を創る人を創る—国際的な視座からの提言」のレポートをお届けする。

文:東 彩織、 撮影:山本大輔(DoCK)

キックオフ・シンポジウム <共創>的な知の開発拠点に向けて 開催概要 https://dock.geidai.ac.jp/news/dock-kickoff-symposium/ 日程:2026年7月12日(日) 時間:14:00~17:35(13:45開場) 会場:国立映画アーカイブ 小ホール 参加費:無料 定員:150名(要事前申込、先着順) 言語:日本語 主催:東京藝術大学大学院映像研究科 助成:文化芸術活動基盤強化基金(通称:クリエイター支援基金) 協力:国立映画アーカイブ

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