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日仏共同企画 こども映画教室シネクラブ@藝大 2026
日本とフランス、まなざしの交換

アニメーション・映画教育を担うエデュケーター育成を目指す「Program 10:エデュケーター育成講座」。来年度の開講に向けて本年度は教育プログラムのテストケースを実施しています。その取り組みの一環として、一般社団法人こども映画教室と連携して、2026年6月14日(日)に、本企画が開催されました。
ワークショップの経緯
本企画は、昨年度DoCKとこども映画教室のメンバーが視察を行ったフランスの「ラルシペル・デ・リュシオール」(映画教育の中間支援組織)からの提案を受け、こども映画教室が中心になって検討が始まりました。
フランスでは、小津安二郎監督の初期作品『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』が、小学生たちが見るべき映画のリストに入っているので、日本の子どもたちにも映画を見てもらい、何かを互いに共有したい、という思いです。
長年にわたり映画教育実践を行ってきたこども映画教室の「大人が手出し口出ししない」「本気の映画人と出会う」というポリシーのもと、1日で行えるカリキュラムを試行錯誤しながら考えていきました。
そして、15名の小学5、6年生が集まり、小津安二郎の『生れてはみたけれど』を鑑賞し、感じたことを話し合う映画鑑賞ワークショップと、映画のワンシーンを再現する映像制作ワークショップを開催しました。 また、ワークショップの様子を撮影した映像や完成した作品は、その後パリの子どもたちと交換しあう事になっています。
スケジュール・プログラム内容
導入
会場にやってきたこどもたちの多くは、初めてのプログラムに緊張している様子でした。 司会をつとめる土肥さんが、「今日ここで何をするか知ってる?」とこどもたちに問いかけます。
「映画を作る!」「昔の映画を見る?」など、それぞれに答えるこどもたち。 この問いかけで、こどもたちが今日何を楽しみにここへ来たのかが分かります。実際は映像を作る、という事を楽しみにしているこども達が多かったようです。
さらに、大人の自己紹介では「名前覚えゲーム」を行い、それぞれ順番に好きな食べ物を言っていきました。 覚えられない大人を見て、代わりに教えてくれるこどもたち。自然と笑顔がこぼれ、こどもたちの緊張がほぐれていくのがわかりました。 鑑賞WSでは、ファシリテーターの入り方が重要なのだという事が、改めて感じられた場面でした。
鑑賞ワーク①
まずはみんなで、『生れてはみたけれど』を鑑賞して、わからなかったところ、いつも見ている映画とは違うところについて話し合いました。
「正解があるわけじゃないよ」「わからなくても大丈夫」という土肥さんの声かけによって、こどもたちは不安を持たずに積極的に発言し始めます。
「色がなかった」「セリフが聞こえなかった」など初めて見たサイレント映画を新鮮に感じ取った様子の子どもたち。中には、「なんでこういうタイトルにしたんだろう?」という疑問が生まれ、別の子が自分なりの考えを伝える場面もありました。


鑑賞ワーク②
20秒間目を閉じて、映画のシーンを一つ思い出してみる。その時、頭に浮かんだのはどんなシーンか、それぞれペアになってお互いに発表し合いました。
冒頭の車が泥にはまっているシーン、親子でおにぎりを食べるシーン、踏切を待っているシーンなど、同じ映画を見ても心に残るシーンはバラバラ。「なぜそのシーンが頭に浮かんだんだろう?」という問いかけに、子どもたちはそれぞれ自分なりに考えを深めているようでした。
ペアになる事によって、こどもたちがたくさん話す事ができた反面、チームリーダーがファシリテートする事ができず、全体がバラバラになってしまったのが難点でした。 予定を変えて、みんなの意見を聞く時間を作り、それぞれの考えを共有する時間を作る事で対応しました。


鑑賞ワーク③
映画に何度も出てきた、相手を倒しては生き返らせる、というこどもたちの振る舞いについて、グループで考えてみんなの前で発表しました。
「立場の違いを表現していた」「あれでこども達が仲良しになるのが分かった」などいろいろな意見が出ました。中には映画のタイトルと関係してるんじゃないか、という意見が出て、大人たちも気づかなかった発見にびっくり。
筆者(DoCK特任講師 廣原)は今回、ファシリテーターをつとめましたが、この話し合い部分のファシリテートはとても難しいと感じました。 初めて会ったこどもたちなので、できれば大人の方を向かずにこどもが中心となって話してほしい。そう思って、チームリーダーが距離を取ってみますが、そうなると中々話が深まっていかない部分もあり、悩ましかったです。
青チームでは迷った末、「とにかく自分が思ったことを書いて、発表しちゃおう」と伝えて、まとめるよりも、自由に発言することを大事にしました。 この辺の距離感は、時間やスケジュールにも関わってくるでしょうし、まだまだ課題が残る部分だと思いました。


制作ワーク
いよいよこども達が楽しみにしていた制作ワーク。 映画に出てくる上映会のシーンに、自分たちが出演して撮影します。
同じ観客でも、どんなリアクションをするかによって、映像のイメージや人間の関係性が変わっていく、という講師のおっくんの話を聞いて、子どもたちはアイデアを話し合います。 少ない時間の中で、決断よく行動する子どもたち。撮影してはみんなで見て、印象を話し合います。
ある班では、リモコンでテレビのように消すというアイデアが気に入り、みんなで撮影しました。諏訪さんがそれを見て、「リモコンが手元にあると、ただ消しただけに見えるけど、遠くにあるとどうだろう?」と投げかけます。実際にやってみると、先ほどよりも、みんなのリアクションや消す人の感情が感じられるようになって、子どもたちも「いいじゃん」と満足した様子でした。
この辺りのファシリテートはこども映画教室のスタッフは慣れたものです。「手出し口出し」はしないが、「本気でやろう」という熱意を持ってこども達と接します。 短い時間ながら、こども達も夢中になって作品を作り上げました。



上映会
最後に保護者の方も一緒に上映会を行いました。 100年近く前に作られた小津安二郎の映画と、子どもたちの撮影した映像が切り返すシーンには不思議な感動がありました。 俳優の斎藤達雄の飄々とした振る舞いと、子どもたちの無邪気な振る舞いが重なりあい、会場は、三者三様の作品に笑い声に包まれました。
最後に、フランスのこども達が同じ映画を見ている様子や撮影した作品を見ました。 フランスでは、こども達は映画館に行って映画を見て、映画館のメディエーターが映画の解説やこども達に質問をします。 学校に戻ると、今度は学校の先生がファシリテーターとなって、鑑賞WSや映画制作WSを行います。
(学校の先生は、ラルシペル・デ・リュシオールのスタッフと事前に話し合って、どのようなワークにするか準備をします) 映画館や学校という場で、こういった教育が当たり前のようにできるという事が、映画教育への社会的認知の深さが感じられます。 日本でもこういった試みが日常的に見られるように、改めて「エデュケーター育成プログラム」の必要性を認識しました。 こども達もまた、自分たちとは違う環境で映画を見て、ワークショップをしているパリのこども達を見て、興味をもち、大いに刺激を受けたようでした。

振り返り
最後にファシリテーターや見学者が集まり、フィードバックを行いました。 昔のサイレント映画を、子どもたちは楽しんでみられるのかと最初は不安に思っていましたが、実際はとても楽しみながら鑑賞をすることができ、その部分のハードルはほとんどなかったように思います。その分、鑑賞については、もっと余裕を持って子どもたちの考えを聞いたり、ディスカッションする時間が必要だったかもしれないという意見がありました。
今回は、見学者の方の新しい視点からの意見が大変参考になりました。今後、子どもたちのアンケートや、今回入っていただいた教育学の先生の観察レポートを参照にして、しっかりと分析して、次のプログラムへと活かしていきたいと思います。




